境界を超える日本画〜加藤弘光の挑戦〜

180cm x 180cm 2012
Ink, gold and colors on Japanese paper
境界を超える日本画〜加藤弘光の挑戦〜
2026年5月8日(金)〜5月21日(木)
会期中無休
12時〜18時(最終日16時まで)
加藤弘光展によせて
美術史家 隠岐由紀子
加藤弘光展によせて
美術史家 隠岐由紀子
満開の桜の上に月が輝く夜、ふと天国の門をくぐって逝ってしまった加藤弘光さん。
残された夥しい画面の数々は、彼が対象から受け取った自然の息吹を永遠に私たちに届け続けている。ごく細密に描かこまれた花びらや葉脈、漣の反映は、何百何千という写生画を重ねた末に、作品として結晶化し、今私たちの眼前にある。
夫人によると、画家は下描きもせずに本画の画面に向かい一気呵成に花や葉叢を描いていったそうだ。ミケランジェロが、誰もが失敗を恐れて刻みかねて野晒しになっていた大理石の塊に果敢に挑んで、あのダヴィデ像を彫り出した有名なエピソードを思い出した。仕損じが怖くないかと問う人に彫刻家は、中に有るものを取り出すだけだと語ったという。
画面をおおいつくす桜、紅葉、蔦、百合、睡蓮。そうした作品を前にして以前弘光さんに、色と形の反復には型紙や刻印を用いるのかと問うたことがある。「とんでもない、花も葉もひとつひとつ精一杯に咲いているから、ひとつひとつをその命のまま描かなくては」というような答えが返ってきた。
加藤弘光の絵画は、寝食をわすれた描画への没頭から誕生している。それは一輪の花、一枚の葉の語りかけに、彼がどこまでも誠実に、あるいは自身の命を削ってでも向き合った証なのだ。
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